2016/05/19 第5回 小野寺俊明氏(スポーツ企画工房代表)『わらしべ長者の「間」が大事』(後編)

Share on FacebookTweet about this on Twitter

理事長の小村をホスト役とした企画・「対談すごトーク」。第5回目となるゲストは、スポーツPRコンサルタントの小野寺俊明さんです。
(⇒[前編]はこちら)
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

■スポーツ業界に就職することに必要なこと

小村:様々な経験や幅広い仕事を現場で見てきた小野寺さんから見て、スポーツ業界に就職することに必要なことは何でしょうか?

小野寺:スポーツが好きでスポーツ業界に入ってもベースになる仕事の力がなければ通用しないということです。例えば、スポーツライターになりたい人に私がよく言うことは「スポーツライターになるために一番必要な能力は何か?」と聞きます。取材力、企画力、知識、文章を書く能力ではないのです。自分自身の営業力です。営業力は自分自身の仕事を獲得する力だけでなく、大手組織にありがちな派閥や理不尽を知る、または人の動かし方、人とのかかわり方を知っている人のことです。ベースになる仕事に対する力というのは、そのようなことです。

小村:確かにそうですね。

小野寺:プロ野球でもJリーグでも1億円のスポンサーを獲得できますとか、チケットを年間5000万円くらい売りさばいてきますという人は採用されます。すなわち、現在の日本のスポーツ業界は仕事に対して成果を求める状況です。人材をゆっくり育てる余力があるスポーツ組織はほとんどありません。逆に言えば、自分の武器でどれだけできるか、勝負して試すことができるところなのです。また考え方としては、無理に金銭的な体力がない球団やチーム側ではなく、お金がある側につくというのもひとつの考え方です。私の場合はたまたまスポーツ関係の放送局側についたわけです。入社するというのもひとつだし、私のように入社をしなくても関わることも可能です。

小村:関わり方はたくさんありますからね。

小野寺:私のようにライターやっていた人がキャリアアップで、編集者になるケースもあります。こういう人もいました。学生のインターンから社員になり、責任者へと昇格し、親会社に転籍して、そこの社員としてあるメジャーなスポーツ団体に出向し、デジタルマーケティングを総括する立場になった知り合いです。彼は元々それをやりたかったそうで、泳ぎながら夢にたどり着く人もいるのです。どこが近道でどのルートが良いのかはわかりませんが、その時々でできる領域を増やしていくことで、次の機会が生まれてくるのだと思います。

小村:なるほど。ベースになる仕事の力や成果を得る力が必要ということですね。確かに現在のスポーツ業界はそれらの力を他業種で培った人が転職して入るケースが多いです。しかし、インターンからついに夢であるスポーツ団体のデジタルマーケティングに携わるまで、『間』でキャリアアップして到達する人もいます。小野寺さんが今まで見てきた中でスポーツ業界への第一歩として関わるケースパターンを挙げてもらってもいいでしょうか。

小野寺:そうですね。例えばよくあるパターンとしては、ボランティアやインターンから関わり入社するケースがあります。スポーツ用品メーカーで3年働いていた人の話しです。たまたま扱っていたのがスポーツの用品なだけでいわゆる営業職でした。スポーツに携わっている感じがしないということで、Jリーグのクラブに転職したいと考え知りあいを通して部長にアタックするも枠がないと断られました。しかし、志は高く、会社を辞めて味の素スタジアムでのボランティアとして1シーズン通して頑張っていたところ、FC東京から一人欠員が出たからと声をかけられ入社したという人もいました。

小村:それはよくある稀なパターンですね。たまにそういうこともあるので、ボランティアスタッフやインターンとして頑張る人は多いのですが、そこから社員になれるケースはほんの一握りです。たまたまポストが空きチャンスが舞い込むことは滅多にないことであると思うのですが、そのチャンスを得られる人とそうでない人の差はどうお考えですか。

小野寺:大事なのは、ボランティアやインターンしている時に、こいつはインターンでいいやと思われているのか、こいつは隙があれば社員になりたいと思っているやつなのかと認知されているかどうかが大事なんですよね。そこにいるから安心しちゃダメで、周囲に認知させなければいけないんです。先のJリーグクラブに入った子も最初に「ここに入りたいです」と面接をして、枠がないと断られた経緯があります。それでもボランティアで関わってアピールしていたからこその結果なのです。そういうアピールがなければ、欠員が出た時に他の人に話がいっていたかもしれません。クラブの人が彼女の志を認知していたからこそ、欠員が出た時に最初に声をかけてくれたのです。

小村:滅多にないチャンスをどう掴むか、本当にその通りだと思います。他にスポーツ業界への入り方の事例はありますか。特に海外留学からの道はいかがですか。

小野寺:昔は留学してスポーツマーケティング勉強すれば戻ってきたとき就職できるのではないかと、一時留学者が多くいました。現在はただ留学して勉強したからと入れるケースは少ないですね。留学だけでなくプラスアルファ―が大事と感じます。例えば留学する前に営業やっていたとかバックグラウンドがあってとか、留学先の国でスポーツビジネスに触れてきたとかですね。安易に留学する人が多いですが日本に戻って即スポーツ業界というのは難しいのが現実です。最近のパターンはスポーツ留学をした後に、日本の銀行や企業に一端就職し、数年後にスポーツ界へというのが多いかもしれませんね。

小村:行動に意図を持たせて動くことが大事ですね。他にはありますでしょうか。

小野寺:他にはスポーツのスポンサーをしている会社の社員になりスポーツに関わる。またはそのつながりから転職をするパターンや、同じようにライセンシーの社員として関わるというのもあります。出資企業の社員から出向、転職として関わる。インターンネット制作会社の社員として関わるなど、スポーツに関わっている会社に入り近づいていくというパターンも多くあります。外資系の保険会社の社員で偉くなると、部下を自分が採用できるようで、引退した元選手をスカウトしてつながりをつくる人もいましたね。

小村:面白いことに「スポーツ」はどんな職種でも絡みがある珍しい業界ですから、ルートは色々と考えられそうですね。そこをどう動きアプローチしていくのかをサポートするのが「すごラボ」の役目と思っています。

■スポーツ業界を目指している人へ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

小村:スポーツ業界の大先輩としてスポーツ業界を目指している人たちへアドバイスをいただけますか。

小野寺:先ほども言いましたが私はスポーツをあまり好きではなかったみたいです。しかしスポーツの良さを伝えるのが好きなのです。それに関しては何をやっても苦痛がありません。朝6時まで仕事をしていても苦痛でない。何かが好きということと仕事は分けて考えることです。自分の本当の特性を把握して関わることが大事です。
チャンスというのは、やりたいことや、できることを整理して言える人に来ます。例えば、誰かに私がスポーツの仕事をやりたいですと漠然と言われても引っ掛からないのですが、(すごトーク受講者の彼のように)ベネズエラでスポーツのこういうことをやりたいですと言われたら、ベネズエラという言葉はインプットします。するとどこかでベネズエラのネタが出た時に、そういえば、その件に関しては知り合いがいるから紹介しますとなるのです。だから、何をしたいという質問に対して、こういうことをやりたい、こういうことができると具体的に端的に言えるとチャンスが生まれます。

小村:自分自身を人にタグ付ける、そういうフックが必要ですね。まずは気付いてもらわねば次に進みません。

小野寺:これは実際あった私の話しです。DVDプレーヤーを買った直後に福袋でDVDプレーヤーが当たってしまったのです。DVDが2台もあって困りました。そんな時に会社の後輩と昼飯を食べている際に、その後輩が「DVD欲しいんですよ」とボソッと言った。すぐに私はDVD余っているからもらってくれないかとなりました。「いいんですか」と後輩は喜ぶ。私は邪魔だったから引き取ってくれるだけで嬉しい。双方嬉しいわけです。では、私がDVD余っているから誰かいらないかと声をかけることは、ないよね。すなわち、自分が欲しいことや、したいことは、自分から言わないと相手にはわかりません。あんなことを言っている人がいた。あれをやりたいと言っている人がいたと人に思わせるためには、自分の思いを具体的に伝えていかねばなりません。具体的であればあるほど実はそれがチャンスにつながるのです。それが自分の人生を変える一歩になるのです。

小村:具体的に表現をする大事さですね。キャリアがない新卒の人たちへのアドバイスもお願いします。

小野寺:ソーシャルメディア関係の仕事をしている身ではありますが情報を鵜呑みにしないことです。自分で考える。自分で情報を探すことが重要です。新卒の子にいつも言っていることは「一番大事なことはインターネットにのっていない」ということです。色々な人に会う。直接会う。自分で動いて手間暇かけないといけない。後は人生は意外に長いです。私も36歳で転職をしました。遅いとか言われましたが、そんなことはなかったです。なので、「今すぐ」を考えすぎないことです。就職志望動機のことで「なりたいもの」や「したいこと」がわからないんですと聞かれますが、見つからなくても焦らなくていいと言いたいです。私は今の仕事が天職だと思ったのは50歳超えてからだし、若いうちに方向性が決まるのはいいことですが焦らなくていいのです。

小村:このすごラボがやっている「すごトーク」も自分のフックを作る場としています。まず自分に気付いてもらい、興味を持ってもらわないと次につながらない。そして好きになってもらわねば誰からも紹介されることはない。そこをまず作る訓練をやっています。今回小野寺さんにお話をしていただいたことは、まさに私も指導していることにつながる話しでした。小野寺さんの生き方自体がイノベーション的な生き方に感じました。先の事はわからないけど、でもこうなりたいがあり、自分の強みを明確に表現し、相手の記憶に残るような動き方をする。

小野寺:スポーツ業界に入りたいというのがひとつの目標ではあるとは思うのだけど、その先の目標もないと続かないです。できれば入った後の野望とかがあった方がいいと思います。そして、何度も言うことは「行動」をすることですね。私も某球団のサイトに関してのセミナーに参加をするため遠出をして聞きましたが、全て知っている内容で知識としては意味がなかったのです。ただ行って聞いたことで、自分のやっていたことは間違っていなかったと確信になりましたし、球団よりも自分はまだ上にいると思えました。それを無駄骨と思うか否か。

小村:まさに受け止めたことに対してどう解釈をするかですね。何事にも未来を向いて生きることが大事です。未来へ向かう行動と考え方があるから、ご縁とタイミングもつかめるのかもしれませんね。

小野寺:ご縁とタイミングの話としては、こんな話があります。ヨーロッパでは幸運の神様は前髪しかないそうです。後頭部はないみたいですから、待ち構えて準備して捕まえないと、あっと言った時には行き過ぎていて、後ろ髪はないので捕まえられません。要するにしっかり準備しておく、何か話があったときに出られるようにしておく。企業でも同じで、例えば、大きな案件があるのですができますかと言われた時に、ちょっと態勢を整えますという返答だと間に合わない。関連のところに相談すればできますと即答すれば仕事は得られます。考えさせてくださいなんて言っていると、その間に話がひっくり返っていることなんてザラですね。その場で答えられるようにしておく、その場で動けるようにしておくというのは大事ですね。

小村:最後にスポーツ業界を目指している人たちに伝えておきたいことはありますか。

小野寺:私の座右の銘は、リクルートの創業者の江副浩正氏が言っていたリクルートの旧社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」です。何かやらなければいけない、何かしないといけないと思ったときに、それを実際行動できるかどうかが大事なのです。

小村:貴重な話の数々、ありがとうございました。
<了>
====================

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

◆プロフィール◆
小野寺俊明(おのでら・としあき)
株式会社スポーツ企画工房代表取締役。
京都出身。同志社大学法学政治学科卒業。1987年リクルート入社。2000年退社しスポーツライター活動を開始。2001年スポーツマーケティング会社を共同で設立し、取締役としてスポーツマーケティングチームのチーフプロデューサーに就任。スポーツ団体や選手のサイト、テレビ局のスポーツサイトを数多く立ち上げたほか、スポーツ団体やチームの運営・広報、Web戦略のアドバイザーを務める。
2004年からプロバスケットボール「bjリーグ」のPRマネージャー、2013年から横浜ビー・コルセアーズの広報戦略室長官、2015年から株式会社レピュコムのPRマネージャーを兼務。スポーツライターとしても活動し、「Yahoo!ニュース」で個人アカウントを持つ。また、2006年から2011年まで中央大学商学部客員講師としてスポーツビジネスを教えた。
◆著書
・「BUZZER BEATER~日本プロバスケットボール bjリーグ 11年の軌跡」の企画・執筆
・「グローバル化するスポーツとメディア、ビジネス スポーツ産業論講座」第2部 第7章 スポーツとネット情報価値 を担当
・「プロ野球2.0 立命館大学経営学部スポーツビジネス講義録」第4章 スポーツとメディア を担当(共著)
・「【FIFAワールドカップへ行こう!】現地観戦BOOK」

新着情報