2016/05/14 第4回 古賀敏陛氏(国際バスケットボール連盟(FIBA)認定エージェント) 『人脈というのは掛け算。自分のやることは足し算』-バスケットボールにおける代理人業について-(後編)

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理事長の小村をホスト役とした企画・「対談すごトーク」。第4回目となるゲストは、国際バスケットボール連盟(FIBA)認定エージェントの古賀敏陛さんです。
⇒前編は[こちら]

 

■スポーツの代理人(エージェント)になるためには

小村:エージェントになるためのライセンスについてお聞かせください。

古賀:国際バスケットボール連盟<FIBA>のエージェントライセンスがあり、私はそれを取得しています。スイスにあるFIBAの本部で年二回、アメリカ大陸やオーストラリアで一回ずつ、取得するための試験は年に4,5回しかやっていません。25問の4択問題試験で8割(6割だったかも・・・明確な割合提示はありませんでした)正解しないと取得できません。試験の題材としては選手登録制度など民法に近いルールブックが英語であるので、それを勉強します。年会費が1000フラン、日本円で12~15万くらいです。試験に合格して年会費を毎年払っていれば、FIBAのエージェントとして活動ができます。エージェント業務は、その国の弁護士資格を持っているかFIBAのエージェントライセンスを持っている人しか移籍交渉には携わってはいけないというルールがあります。現在の日本でFIBA公認のエージェントライセンスを持っているのは6人です。

小村:選手の労働組合のようなものもあるんですよね?

古賀:ライセンスルールの話をするとNBAのエージェントの場合は、NBAのプレーヤー・エージェント・ライセンスがあります。NBPA(National Basketball Players Association)という選手の労働組合があります。選手会というものです。アメリカの場合は選手会が労働組合の申請をしているので、ストライキなどの権利を持っています。アメリカのスポーツの仕組みはバスケも野球も同じなのですが、エージェントライセンスはNBPAが発行するのです。組合が選手の権利を守るためにエージェントが活動するというのが前提だからです。このNBPAが発行するNBAプレーヤー・エージェント・ライセンスには申請をして審査に合格し登録料を支払えば取得できます。私も2016年度を取得しました。またサッカーの場合はFIFAのエージェントライセンスが2015年3月に廃止され、今は仲介人制度です。自分が住んでいる国の協会に申請し、審査に合格し登録料を払って認定してもらうものです。私はサッカーも好きなのでこれから登録をしてサッカー選手のエージェントもする予定です。

小村:幅広くご活躍される予定なのですね。古賀さんがエージェントとして活動する際には、選手からオファーが来て動かれるのですか?

古賀:エージェントは選手やコーチ、トレーナーなどのスタッフ関係者の移籍に関わることですが、大きく2パターンあります。1つは選手等から依頼があり自分がクライアントとして抱えてやるケースと、もうひとつはチームから依頼されて選手を探すというケースがあります。
外国人の場合は、私が提携するエージェンシー(代理人会社)と連携して行います。現在メインで取引があるのは3,4社です。ただし嘘がなく裏切りがなく信頼できるエージェンシーと一緒に行動をしたいので、3,4社というよりは3,4人と連携をしていると言った方が正しいですね。

小村:代理人はどのようにしてお金を得ているのですか。

古賀:エージェントフィーの売り上げは日本の場合は選手の契約金の8-10%が目安です。外国人の場合で多いのは、選手を獲得してくれたチームが私に対してフィーとして払ってくれます。払ってくれた金額をパートナーとして組んでいるエージェンシーと50%ずつ分けるというのが基本です。日本人の場合は選手の給料からいただくという形になります。ちなみに、NBAの場合は上限が5%で下限が3%と選手会(組合)で決まっています。1億円の3%は300万円、10億円の3%は3000万円ですね。エージェントは何人もの選手を抱えているため、選手の年俸を超える額を取得している人もいます。ただ日本のバスケ界の現状は、一番年俸をもらっている選手でも5000万円はいないと思います。

小村:bjリーグではサラリーキャップ制度がありましたからね。

古賀:2016年秋からのBリーグでは、今までのサラリーキャップがなくなり、ルーキーの選手の上限が480万円(案)。40万円×12か月と言われています。お金としてはそのような物差しがあります。bjリーグはサラリーキャップがあり1チームあたり7700万円です。外国人を入れて12人の選手の総年俸の合計の金額が決まっています。そうすると選手を抱えて10%といってもエージェントとしてやっていけません。何人入れなければいけないんだろうという感じですね。ですから私は主に外国人選手の代理人をやっています。昔のbjリーグは外国人選手登録が5人、今は3人1チームに所属できます。数を稼げるので外国人選手を主としてやっていました。

小村:なかなか、安定した収入を得るのは難しそうです。

古賀:はい、エージェントの仕事は正直不安定です。4月頃から7月までの間に成果を上げなければなりません。自分が営業をした結果が全てであるので完全歩合です。選手が売れなければゼロ円。決して安定がありません。だから営業力が大事です。営業をやったことある人はわかると思いますが人脈も大事です。そして何よりも自分の信用。この人が言っているのだから間違いないなと思ってもらえる状況を築けるかが大事です。

小村:選手や球団関係者との信頼関係が重要である。それはスカウトのような選手への目利きが重要な仕事でもありますね。

古賀:10%の売り上げしかないのであれば、良い選手・高い選手を入れた方が良いということですね。私は安い選手を高く売るつもりはありません。それは私の信用にかかわります。例えば100円のものを1万円で売ったら詐欺だと言われます。だけど、100円を150円だったらどうかなと思っても、それでも高いと言われる。それでは適正の利益が20%だとしたら120円。それなら買うと言われる。自分の目利きです。いかに選手を見て値段はどうか。外国人のエージェントからこの選手はこの値段だよと言われ、実際にプレーを見て、自分自身の判断でそれだけの価値があるのかないのかを判断できるか否かです。

小村:チームによって価値の判断基準も違いますし。

古賀:チームにこの選手はこの値段の価値がありますと売って、チームは信用して買ってくれても結果的に働かず、何だこの選手はと言われ「バッテン」を付けられるのは、選手ではなくて私なのです。ですから自分のためにも信用度合を落とさないよう仕事をすることを心掛けています。
もちろんチーム側と駆け引きをするためにも、そのチームがお金を持っているのかどうかを調査します。観客入場者数やスポンサー、会社の決算書など収益をどのくらいもたらしているのかを調べます。高く交渉できる良い選手は優先的にお金を持っているチームに売り込みます。会話の中でチーム側の要望も出るため、それに見合った選手を提示できるようにしておく。これが選手交渉です。

小村:エージェントという仕事は営業マンのような感じですね。

古賀:そうです。選手を考えた時に、例えば、ここに煎餅があります。この煎餅はどこのメーカーで、何味か、固いか柔らかいか。歯が痛い人に堅い煎餅をあげたら嫌がる。和食が嫌いな人にしょう油味は嫌われる。お爺ちゃんお婆ちゃんにクリーム系の甘いのは嫌がられる。選手交渉でも同じようなことがあります。これはどのビジネスでも一緒です。自分の置かれている仕事の中でやりたいことをやるのであれば、どうやってその仕事を分析して、何がどうすれば仕事が成立するのかを勉強しなければなりません。マーケットを知ることに関しては、値段を考える。世の中的にはいくらなのか。煎餅であればお店ではいくらで売られており、実際の原価はいくらなのかメーカーに問い合わせてみる。世の中的に原価率は食品の場合はどのくらいの%なのか当然わかります。それぞれの業界の中であると思います。エージェントの仕事だからといって特別なことは何もないのです。

小村:確かに、そういう点では他の業界でも同じですね。

古賀:だけど少なからずその専門分野の知識を人よりも深くあった方が良い。人脈もあった方が良い。選手が怪我をしてしまって至急変えねばならない。どうするか。とりあえずアイツに連絡をするか。その「とりあえず」の一人になっておく信頼関係を築いておくのは必要です。その積み重ねが「とりあえずアイツに連絡をしよう」となっていくのです。依頼があれば、そのスペックある選手を探しますよと、提携しているエージェンシーと一緒に探して、こういう選手はどうですかと提示します。その選手がハマるかハマらないかの問題。それはコーチが求めている選手像に近いプレーヤーを紹介する。身長はこのくらいの選手が欲しい。この選手はちょっと身長が低いけどこういう特徴がある選手ですと提案します。その選手の値段はいくらですか。値段はこのくらいです。高いな。では選手と話してきます。このくらいなら譲歩ができますよ。もしくはボーナスのオプションは何かいただけませんか。こういう交渉の展開です。一般的な営業と変わらないと思います。

小村:どの業界の営業マンも交渉をするにあたり信頼関係の構築は不可避なものですね。

古賀:特にエージェントは人とのつながりが大事です。ビジネスである以上はどこかで人と繋がっていないとできません。そのルールがどうなっているのか自分が分析できるかどうか、どこから利益を正当に得られるかどうか。しっかりと分析して努力して、また人の力を借りないとできないこともある。
「人脈というのは掛け算です。自分のやることは足し算です」
1人の人間には1日24時間と決まっていてそれが増えることはありません。自分を手伝ってくれる人がいると倍になる。真面目に一人でコツコツやることも大事ですし、時には人の助けを借りることも大事です。その代り、人の助けを借りるということは自分がその人に対してどう返してあげるのか。それがないとギブ アンド テイクにならないですね。

小村:最後にスポーツ業界を目指している人たちにメッセージをいただけますか。

古賀:私は自然の流れの中でエージェントになりましたが「使命感」を持ってやっています。成功している人はやり続けているから成功しているだけであって、同じことをやっていても運が悪く失敗している人はたくさんいます。自分が努力をして分析し一生懸命やっているのは当然で普通です。頑張るのも普通。どうやって成功するかを死に物狂いでやっている人が成功している人です。出来る限り情報分析して人のネットワークを作り、新しい情報や正しい情報が入ってくるような環境をつくる。その得たものをどうやって自分がビジネスに変えていけるかを考える。繰り返しになりますが、自分のやりたいスポーツのことを調べて、ゴールと一歩目を決めて一生懸命頑張ってください。応援しています。
<了>
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koga05

◆プロフィール◆
古賀敏陛
株式会社ジャパン・スポーツ・マーケティング
1991年-2002年いすゞ自動車ギガキャッツ(JBL)マネージャー。1997年-1999年日本代表男子バスケットボールチームマネージャー兼任。2005年-2008年JOMOサンフラワーズ(WJBL)通訳。2005年より現職。元スラムダンク奨学生の谷口大智選手(秋田ノーザンハピネッツ)や石川海斗選手(岩手ビックブルズ)をはじめとする日本人選手や、富士通レッドウェーブの BT テーブス ヘッドコーチ、秋田ノーザンハピネッツのジョー・クック アシスタントコーチなど、bj リーグ、NBL、NBDL、WJBLのプレーヤーやコーチの日本国内と海外への移籍業務を行っている。

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