2016/05/06 第2回 山本康太氏(日本ブラインドサッカー協会) 『障がい者への見方を変える ブラインドサッカー』(後編)

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理事長の小村をホスト役とした企画・「対談すごトーク」。第2回目となるゲストは、NPO法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の山本康太さんです。
⇒前編は[こちら]から

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(写真提供:NPO法人日本ブラインドサッカー協会)

■障がい者 ≠ 「かわいそう」

小村:具体的に協会ではどのような活動を展開されていますか?

山本:日本代表やクラブチームの強化活動や若い世代の発掘・育成、視覚障がい児向けの普及活動、大会運営、普及広報活動等を行っています。特徴的な活動としては、ダイバーシティ事業です。これは見える人へ向けた活動で、私たちはブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会の実現を目指しているのですが、今の社会の中では健常者が障がい者と接する機会が少ないために障がい者に対しての心のバリアが生まれ、障がいに起因しない偏見や差別、そこからネガティブなスパイラルが生まれています。そこで、ブラインドサッカーで一緒に汗を流しながら、ポジティブな出会いの機会を提供し、障がい者への見方、マインドセットを変えようという活動です。

小村:障がい者へのイメージを変えるという活動を積極的にやられているのですね。具体的にどのようなことをされているのですか?

山本:小中学生向けとしては「スポ育」という出張授業を行っています。2014年は479件実施しました。また、大人向けには企業研修を行っており40件ほど採用していただきました。ブラインドサッカーは目に見えない中でコミュニケーションをとるので、チームワークやチームビルディングといった分野に強みを持っています。その要素を研修プログラム化して学校や企業に導入頂いています。

小村:実際に体験してみたいという場合はどうすればいいのですか?

山本:東京・高田馬場で「OFF TIME」というワークショップを実施しています。個人参加型で、平日夜19時からほぼ毎週行っています。詳しくはホームページ(http://www.b-soccer.jp/)をご覧いただき、気軽に体験にきて下さい。

小村:山本さんは主業務として何をやられていらっしゃるのですか?

山本:広報の仕事をしています。普段はプレスリリースを書いたり、選手への取材対応、リスク管理なども行います。肖像権や放映権といった権利関係の仕事も行っています。広報の仕事は、『営業活動の後方支援』と、非営利組織に重要な『意思決定権の確保を支える柱』という大きな役割を担っています。障がい者スポーツの競技団体は強化費をはじめとする助成金で事業を行っているところが多いですが、ブラインドサッカーはパラリンピックでメダルを獲得している競技ではないですし、それだけではとても強くはなれません。また、協会は、何よりもビジョンを大事にしています。実現に向け多くの活動を行っていますが、その活動を継続するためには自ら資金を集め、助成金に頼らない自立した経営と意思決定権を常に持ち、財源のポートフォリオをどのように組んでいくかが重要となります。営業活動にはどれだけメディア露出があったかも大きく関わってくるため、広報活動はその柱のひとつとされています。2014年の世界選手権での露出は広告費換算で約27億円、2015年のアジア選手権露出では約60億円でした。

小村:その他にはどのような仕事をやっているのですか。

山本:販促の仕事をしています。公式サイトのほかFacebookやTwitterなどSNSを活用しながら協会で行う事業の情報発信を行い、コミュニケーション全般を担っています。クリエイティブにも力を入れていて、大きな大会となればプロのコピーライターやデザイナーとチームを組んで制作を行います。2014年世界選手権の『見えない。そんだけ。』というキャッチコピーは非常に反響が大きかったです。初めて観戦チケットを販売し、試合を有料化しましたが、開幕戦と三決・決勝のスタンドの満員に大きく貢献しました。今年のアジア選手権では、大会アンバサダーである北澤豪さんにもモデルとして出演いただいています。

小村:『見えない。そんだけ。』のポスターのインパクトは驚きましたよ。山本さんがブラインドサッカーに携わって特に思い入れのある仕事はありますか。

山本:大会でのバリアフリー対応の仕事です。大会にお越しになる観客の方の中には、視覚障がい者や身体が不自由な方々が多く来場されます。世界選手権やアジア選手権では誰でも楽しめる観戦環境づくりを行いました。この背景としては、2014年世界選手権でブラインドサッカー初のチケット販売と有料化を行い、システム導入や販売を私が担当したのですが、チケットの価格設定をする際になぜどの競技にも障がい者割引というのがあるんだろうと疑問に思いました。当たり前のように障がい者割引があるけど、それって割引する理由がわからないなと。割引をしておくと障がい者に対して不備があった場合でも許されるんじゃないかとか、そういう理由でやっているのかなと感じました。有識者の方々にヒアリングをしたところ、国鉄が最初に障がい者割引を導入し、それに追随するかたちで障がい者割引が行われていることが分かりました。ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現することをビジョンにしている我々としては、どうあるべきか考えました。そこでいきついたのが、障がい者割引・介助者割引を行うのではなく、誰もが同様に楽しめるサービスやサポートを充実させようと決めました。

小村:確かに障がい者割引というのはよく目にします。健常者に比べると満足度が同等ではないかもしれないという健常者側の見方だと思いますが、具体的にどのようなサポートを行い、障がい者も健常者と同様の満足度向上を図られたのですか。

山本:サービスやサポートツールを提供するための、リレーションセンターを設置しました。具体的には視覚障がい者でも試合の臨場感を楽しめるようにアナウンススクールと提携してラジオによる全試合実況中継を行ったり、会場レイアウトが分かるよう会場の縮小模型(3Dスケールモデル)を用意しました。その他、弱視者でも見えるように拡大ガイドブックや、聴覚障がい者用に筆談アプリ、盲導犬のためのトイレなどを用意しました。障がい者や高齢者など手引きが必要な時にいつでもサポートできるようサービス介助士の資格を持つリレーションクルーも常駐しました。実は、これは、ディズニーランドをモデルとしています。サービスやサポートが充実しているところがないか探しまわっていたところ、行き着きました。見つけるとすぐに、オリエンタルランドで長くバリアフリーを担当している方に直接アポイントをとり、ハード面・ソフト面でどのような考え方と取り組みを行っているかをヒアリングさせて頂きました。そして一つひとつ研究し、できるところからやっていこうと生まれたのが、リレーションセンターの取り組みです。

小村:それらのシステムは画期的だなと思ったのですが、ディズニーランドからヒントを得たのですね。
今後のブラインドサッカーの目標や取り組みを教えてください。

山本:今後の目標は、2024年に世界一になることです。アジア選手権ではリオ・パラリンピックへの出場権獲得はなりませんでしたが、競技面では今一度日本代表を強化に取り組み、2020年はメダル獲得、2024年は世界一を目指します。そのために発掘、育成も同時に行っていきます。また、競技で世界一となった時に、障がい者を取り巻く環境が変わっていなければ、使命を果たしているとは言えません。組織としても、社会の在り方としても世界一を目指していきたいです。

■メッセージ

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小村:最後に、山本さんからスポーツ業界を目指している人たちへメッセージをお願いします。

山本:現場を大事にしてもらいたいです。そのスポーツをどう普及させていくか、競技としてどう強くしていくかというのは、学べる機会も増えてきていますし情報は溢れています。しかし、結局のところ、どれだけ色々なことを学んで知識をつけても、価値あるものを生み出せるかは現場でどれだけ突き詰めて考えられるかです。現場へ足を運び、自分なりの課題を見つけて、解決策を見出し、実戦する。その積み重ねだと思います。それは、どのスポーツにも共通する大切なことだと思います。
<了>

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◆プロフィール◆
山本康太(やまもと・こうた)
NPO法人 日本ブラインドサッカー協会(JBFA) 事務管理部 広報チーム マネージャー
1983年生まれ、神奈川県横浜市出身。グロービス経営大学院卒。
2006年凸版印刷株式会社へ入社し、情報コミュニケーション分野の営業職・企画職を経て、2013年より現職。広報、販促、資金調達、大会運営、企業研修、出張授業等を行っている。
ブラインドサッカーとは2005年学生時代に出会い、大会運営ボランティア、日本代表サポーターとして携わる。2010年地元横浜にブラインドサッカークラブ「ブエンカンビオ横浜」を立ち上げ、競技活動と普及活動を続ける。

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